人間の心に関して、病的な状態や症状としての表現は、
よく目にすることができますが、
では逆に、「真実的に健康な人間像」（1）とは？…と聞かれても、
実はそれを示すことは難くあります。
アメリカ心理学会の会長をつとめた人間主義心理学者である、
Ａ．Ｈ．マスロー（1908-1970）は、
人間の個々の可能性を最大限に開発し、自己実現させることによって、
人はどこまで健康でありうるかを、科学的に追及することを課題とし、
"その課題の回答を見出そうとする心理学"こそが、
真に科学的と呼ばれるに値する心理学であると主張します（２）。
それらの研究においてマスローは、
世界で社会的成功をおさめている人々を対象に調査実験を行い、
その結果、自己実現者たちのパーソナリティに特徴が見出したのです。
それら特徴を目標にしたり、意識化して過ごすことは、
健康になることや、より自分を磨くこと、
成功を得ることなどに、有効になるでしょう。
① 自己実現者は現実を正確に知覚し、現実と効果的な関係をもつことができる。
② 彼らは自分自身や他人や自然をあるがままに受容している。
③ 内面において自発性と純真さと自然さを有する。
④ 自分の使命、仕事、問題をもち、課題中心的である。
⑤ 超越性があり、プライバシーを保つ要求をもっている。
⑥ 文化や環境から独立した自律性をもっている。
⑦ 人々や事物に対する評価が常に新鮮である。
⑧ 時空を超越した神秘体験(至高体験)をもっている。
⑨ 人類と自己とを同一視した"われら人類"という感情をもっている。
⑩ 少数の人々と深い愛の関係をもっている。
⑪ 誰にも公平で、価値や態度はデモクラティックである。
⑫ 手段と目的、善と悪を混同しない。
⑬ 哲学的で悪意のないユーモアのセンスをもっている。
⑭ 創造的である。
⑮ 文化の規範性に抵抗し、特定の文化を超えて自分自身の規範をもつ。
⑯ 自己実現者は強者であるゆえに、弱者に対する思いやりが不足する場合があり、
この点で不完全である。
⑰ 明確な価値観と自己実現の目標をもっている。
⑱ 両極性(例えば肉体と精神など)を解消し、１つの統合として捉える。
～ これらの全てを持っている人は殆どいないものの、
自己実現者はこれらの特徴を相当程度に備えているとされています。～
●現実に対して優れた認知をしている
●高められた自己、他人、自然を受容できる
●高められた自発性がある
●自分の外の問題に、エネルギーを投入することができる
●人間関係における、適切な心的関係性と独立の増大と、プライバシーへの適度な欲求を持っている
●高められた自立性と、文化に没入してしまうことへ心的抵抗ができる
●斬新な観賞眼力と、豊かな情緒反応性を持っていること
●頻繁に、幸福と充実の瞬間を認識する状態にあること
●全人類との一体感の増大
●他人と融和し、愛し、同一視ができ、自我の境界を取り去ることができる
●階級、教育、政治的信念、人種や皮膚の色に関係無く、適当な性格の人とも親しくできる
● 創造性が高められている
引用文献：（１）フランク・ゴーブル,1997：マズローの心理学,産能大学出版部
（２）A.H.マスロー,1997,：人間性の心理学,産能大学出版部
