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「Adult Children Of Disfunctional Family」
……アダルトチルドレン、略してAC。
日本で言われるときの、この言葉は、非常に誤解が多いようです。
単に…“子供みたいな大人”?!、という意味ではありません。

 確かに…、外傷を蒙れば、残った部分の皮膚が成長しにくいように…
幼い頃から家庭に関する心の傷を持って育った人は、その傷に関与するところだけ成長しにくい課題を残しているかも知れませんが、この言葉の中核は、むしろ「アダルトチルドレン」の後に続く、
「〜Of Disfunctional Family」にあるといえます。

 「AC(アダルトチルドレン)」の意味は、

 “家庭の成員の誰かが、過剰な抑圧を受ける家庭の中で育った大人”や、
 “子供の頃に、家庭内の心的外傷(トラウマ)によって 
 傷ついて大人になった人”
などです。

 また、家族や親に限らず、その人のパーソナリティ形成に、大きな影響を与える役割にあった集団組織と関わる心的外傷も、類似の心理状態が見られることがあります。

“家庭”は、本来は日常社会生活の闘いを唯一癒せる憩いの場、
  また、明日へ向かう、心の安らぎの場所…
  だからこそ、生き物が一番無防備になる“寝床”がそこにあり。

 その家庭という場所が、安らげるところでなく、その中に問題性が潜んでいたら…、どのような人でも、自分のペースでゆったりと、“自分”を伸ばしていくことが、難しくなってしまいます。

 「AC」は、パーソナリティ形成の時代で、常に“頑張って”時を過ごしたため、大人になっても、周囲に気をつかい、自分の感情を抑えたり、素直に表現できなかったり、家族や対人関係に問題が起きやすかったり、漠然と“生きづらさ”を、感じながらいる人が多くいます。

 また、過剰な自己愛を強めて自らを守ってしまい、やみくもに、根拠も無く"自分は他の人と違うんだ"という思い込みを、過剰に携えている人も多くみられます。

 もともとは、1970年代に、アルコール依存症の家族の子どもたちの研究から、英語圏で

 「ACOA(アダルト・チルドレン・オブ・アルコホリックス)」

と呼ばれ始めたものが、後にアルコール依存症の家族だけでなく、顕在的・潜在的に何らかの問題がある家族の中で育った子供

 「ACOD(アダルト・チルドレン・オブ・ディスファンクショナル・ファミリー)」

にも、同様の特徴が現れることから、それらをまとめて「AC」と総称されるようになりました。

「AC」は病気としての診断名ではありません。

自分自身で、心当たりがあれば、ACとしての心理的な捉え直しや、 より健康な性格へ向かうためのステップアップとして有効な概念になるでしょう。

○“機能不全”の家族の特徴○

 ・身体的虐待、感情的虐待、性的虐待、無視、
 その他虐待のある家庭

 ・完ぺき主義の気質が強い家庭

 ・融通性のない家族ルール、生活スタイル、
 信念のシステムのある家庭

 ・「他人に話してはいけない」のルール、
 家族だけの秘密厳守がある家庭

 ・自分の感情を見極めたり、表現する力のなさが顕著な家庭

 ・家族メンバーの中で直接対話できず、
 間に誰かを挟んでコミュニケーションを取る家庭

 ・楽しんだりすることを、自然に振舞うことができない家庭

 ・不適切な行動や痛みに対する、耐性が“ありすぎる”家庭

 ・それぞれ家族メンバー個人の境界が不鮮明で、
 介入しすぎる家庭

 ・様々に複雑な状況にあった家庭

 ・“理解されない”感じが漂っていた家庭
 …自分の育った家庭は、上記にあてはまる部分が、ありそうですか?

○現れやすい心理的特徴○

 ・正しいと思われることでも、疑いを持ってかかってしまう

 ・最初から最後まで、ひとつのテーマをやり抜くことができない

 ・本音を言えるようなときでも、なぜかヘンに気を回して、
  自分の気持ちに嘘をつくことがある

 ・情け容赦なく自分を批判することがある

 ・何でも楽しむことができない。

 ・自分のことを深刻に考えすぎる。

 ・他人とどこか親密な関係を持てない。

 ・自分が変化を支配できないと過剰に反応する。

 ・常に承認と賞賛を求めている。

 ・自分は他人と違っていると感じている。

 ・過剰に責任を持ったり、過剰に無責任になったりする。

 ・忠誠心に価値がないことに直面しても、過剰に忠誠心を持つ。

 ・行動が選べたり、結果を変えられる可能性があるときでも、衝動的で、お決まりの行動をする。

 その衝動性は、混乱や自己嫌悪や支配の喪失へとつながるが、

自分の中の混乱に収拾をつけるために、さらに過剰なエネルギーをつかってしまう。


○生じやすい情緒・心性の特徴○

 恐怖心、怒り、精神的な傷つき、恨み、
邪推、孤独感、悲哀、屈辱感、自責感、
無感動、「黒か白か」のオール・オア・ナン形式による
絶対的確信、情報不足、強迫的思考、優柔不断、
学習の障害、混乱、過敏性、危機志向型人生を送る、
操作的行動、親密性の困難さ、楽しむことの困難、
注目引くための集団への参加、依存、
同一化への困難さ、感情表現の困難さ、
親密性をうまく保持できない、
他人を信頼する力の弱さ、生きづらさ
 etc

これらが自分の意志に反して、生じやすいと感じたことがありますか?

○…日常で…

 ・壮大な目標を掲げては、その途中で気持ちがダウンすることがよくある

 ・すぐに“罪悪感”が沸きやすい

 ・他人の欠点が気になりやすかったり、
 “良くしてあげたい”と思いすぎてしまう、

 ・実は、“生きている”ことの幸福感を
 あまり感じられない

 ・いわゆる“凝り性”で、気に入ると
 そればかりに執着する

 ・“感動”の場面や、“感謝”を浮かべるはずの
 対人関係でも、なぜか怒っている自分がいる

 ・何に関しても、“苦い果実”から先に選ぼうとしやすい

 ・“人生修行”が、当然になり過ぎていて、それに対して“楽”が少ない

 ・文化とは違った意味から、他の人と同じところで
 感動できないことが多い

 ・ステレオタイプに、人を断片的に
 判断しやすいところがある

 ・どうにも“人を見る目”がない気がする

 ・何かを達成しても、どこまでも“ゴール”がない感じが残る

 ・常に、スケジュールを一杯にしておかないと落ち着けない

 ・忙しい自分、大変な自分に陶酔しつつ必死になる

  etc......

○無意識に起こりやすいことの例○

自分の“性格的な問題”として考えたものの解決しきれず…。

例1: Aさん『のんびり、ぼんやりしたタイプの人、
特に女性でそういう人を見ると、すごくイライラしてしまう。』


〜 詳しく生育歴を振り返ると 〜 
自分がずっと不満をもっていたAさんの母親の姿や、
母親との間で生じるネガティブな感情の癖が、
別な対人関係で、再現されてしまいやすくなっている状態であった。

******

例2: Bさん『“見下される”のがとにかく許せないので、
対人関係で上に立つことへの執着が激しくあり、
それが自分にも他人にも、ネックになることが多い。』


〜 詳しく生育歴を振り返ると 〜 
威圧的で、自分を理解してくれなかった父親像があり、 どうにかして自分を認めさせたいという、 コンプレックスが強く残っていたことが関連し、 対人関係でむしろ理想を果たせずにいた。

******

例3: Cさん『いざという時の、対人交渉に弱いときがある。
もともと人の感情に敏感で、顔色を窺がってしまいやすいところがある。
他にも例えば、道端で見知らぬ怒鳴り声などを聞くと、
耐え難い気持ちになる。』


〜 詳しく生育歴を振り返ると 〜 
アルコールを飲むと、気が大きくなったり
声を荒げる親と親戚がいた。 いつも“また始まった”という恐れと構えを、
子供時代に持っていたこと。
そんな時にしょっちゅう、顔色や態度を窺っていたことへの関連。


******

例4: Dさん『何かと負けず嫌いで、コンプレックスの強い家系だった。 常に“○○家として”頑張らなくちゃという思いがあり、
学歴や職へのステレオタイプな固定観念が強くある。』


〜 詳しく生育歴を振り返ると 〜 
家系的な文化のように強く根付いている価値基準に、
自分自身が取りつかれていたことに気付く。
価値観の客観性と、自由になる感覚を得て、
気持ちがとらわれることなく本当に望むものへ…。

******

例5: Eさん『何かあると、すぐに自分を責めてしまう。 なぜか、いつも罪悪感を持っていて前に進めない感覚がある。』


〜 詳しく生育歴を振り返ると 〜 
親や周りから“あなたのため”と言われ育てられてきたが、
親の言うことや叱りの意味には、理解できない言動が多かった。
時には、手を上げられることもあり、解せない思いを抑圧していたが、
“自分が悪い”と思うことで無理に納得させていた。

******

○ACと密接な“共依存”パーソナリティ○
ACを個人単位のこととすると、“自分がない”の「共依存」は、 対人関係・人間関係の病理性としてみることができます。


 幼少期の心的外傷や、家庭内の問題に対して、無意識にも“過剰な適応”となり、自分自身のこと以外に、心的な努力に時間を費やさざるを得なかったたことで、家庭の中で育っていくはずの、個人の心の成長や分化という、
重要なプロセスを体験できなかったことで起こるとされます。

  共依存については、いろいろなパターンや説明がありますが、 それらを簡略して特徴を挙げると、

 ・良くも悪くも、他者に干渉したがる⇒“他人の存在”があることによって、 “自分の存在”を確認するため。

 ・“世間一般の価値レベル”に合わせて、自分の価値をつくる努力。

 ・他人の欲求に合わせることが、自分の責任であるという思いこみ。

 ・自分は『有名な○○会社に属している人』、自分は『優れた子の親である人』等々、 “自分”の価値を説明するものが、“自分以外”の形容に依存する。
 ・内省ができず、自分の欠点を見つめることへの、格別な恐れをもつ。
  
   etc......

ACでも、家系の伝達にとらわれずに、優れた能力を発揮する人々も多く、 そのような、世代間伝達を断ち切る役割に相当する人を、 「サバイバー(生き残り)」と呼びます。

ACという概念を、自分自身でアイデンティファイすることで、 エネルギーは、プラスに働きやすくなります。 そのためには、下記の概念が重要になります。


○治療概念○

子供時代に失ったもの、傷ついた感覚を認め、 嘘でも理想化・幻想化していた“親像”を捨て去ること。

自分が、自分自身の親代わりになる心の技術を学び、 自分自身を、改めて育てていくこと。


 もともと親も、ただの普通の人間であり、どのような家の親も"完璧"ではありません。 親や家族を現実より過剰に高く評価して心に留めていたり、 或いは、家系的な問題を過度に否定するのでもなく、 自分のパーソナリティに関わる対象として、 長所と短所の双方を、客観的に知ることは、 自分の成長につながって行きます。
例えば…、もしも行き詰ったときは

“もし、〔私が目標とするタイプ〕の人間を 育てることができる親がいたとしたら、今ここで何と言うだろう?”

と、 理想的な架空の親像を、自分の中に想定してみる…etc.


 ACの治療概念は、ACのことだけに留まらず、 人間の成長における、共通原理ともいえるかも知れません。

どのような人であっても、自分のルーツを探る“捉えなおし”の構えは、 心理的に役立つものになるでしょう。



参考文献:緒方明,『アダルトチルドレンと共依存』誠信書房,2002
                     斎藤学,『家族依存症』新潮社, 1999

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