方 法
@ クライアントは身体を横にして(あお向けに抵抗がある方は、座った体勢のまま)、最近の気分、解消したいこと、または今日の感じ等々、自由にその場で思いつく一言を発して目を閉じてりリラックスします。
例:「何となく、もやもやする感じ」⇒「もやもやする」でスタート
A心理士も目を閉じ、目前のクライアント存在そのものに意識を集中します。
B 超心理学分野における透視により、心理士の頭の中の、前頭葉近辺(感覚的には、おでこのやや上辺り)に、イメージや形態、言葉などが浮かび上がって来ます。
Cイメージや形態、言葉などを感じ取ることができたら、同時にFAP療法の解釈による指や臓器の反応にも注意を向け、見える印象の強度や指の反応などによって、捉えたイメージを短めに言語化してクライアントに順番に伝えて行きます。
例:「書類」→「大量な」→「孤独」→「通路」→「鍵」→「話しかける」・・・etc.
E イメージが現れなくなったら、指の反応がなくなったところで終了します。
(クライアントによってそれぞれですが、所要時間は20分くらいになります。)
イメージの内容をクライアントにフィードバックすることで、
クライアントの様々な感情体験、無意識的な側面への洞察として象徴解釈を行ったり、面接の方向性を決定する材料にしたり、現在の心的環境などをクライアントと心理士において、より直接的に共有することが可能になります。
浮かんで来るイメージや、心象風景の全てが心的外傷と関わっているとも
限らないようですが、クライアントの現在携えている問題性が、過去の心的外傷と関連付いている場合には、特にそれと関連した物体やエピソードや場面そのものが現れることが多く、ネガティブイメージの除去へ進んでいくようです。
たとえば・・・
ほんの少し、入り口部分をご紹介します。
ある20代女性の例。
ある日のセッションを始めた途端、心理士に浮かんだものは…、
「…“ゴムパッキン”みたいなものが見えるんですけど…コレ何ですか?」
「あぁ〜、笑!昨日、ストレス溜まって、急に意味もなく風呂掃除を
必死にしてたんですよ、排水溝の裏まで。
昨日じっと見てましたねぇ、ゴムパッキン、爆笑。」
もちろん、これは導入で、その後、その時期にクライアントが
抱えていた問題の核心に触れる方向へつながった言語へ…。
ある子どもの例。
いくつか言語をあげるうちに、金魚の絵のようなものが心理士に
浮かんだので、「・・・⇒金魚…」とフィードバックした途端、
FAP療法の解釈における、“怒り”の感情が強く感じ取られました。
終了後に、いくつか気になる言語や解釈を述べた他に、
「金魚って?」と尋ねると、「きんぎょすくいで、とれなかった、くやしかったの。」
確かに、その子にとって小さなトラウマの1つでしょう。
そのような小さなものから、徐々に深い側面へ進むことは多々あります。
ある40代男性の例。
リラクゼーションコースにおいて、心理士に見えたイメージ。
「・・・⇒返事⇒たくさんの人⇒・・・」
終了後: 「…そう、今気になってるストレス。何人か、返事をしなくちゃいけないメールが溜まっていて気が重くて、たいした内容じゃないんだけど、何だか知らないけど、とっとと返せば良いのに後回しにしちゃって、やる気がおきなくて。…でも、帰ったらすぐやれそうだな。」
ある30代男性の例。
心理士より、「・・・⇒穴⇒落ちる⇒・・・これ、気になる感覚に受け取れたんですけど、何か覚えありますか?」
「今、目を閉じていて、何十年ぶりかに思い出した。…なぜだろう、すっとそのこと忘れてた…結構自分には大きな事件かな。
小さい頃、ものすごい深くて細長い穴に落ちてしまった。友達が上から見下ろしてた…そのうち親が来て、怒ったような困ったような顔で自分のことを見ていた。結局どうやって助かったのかは忘れてるけど。本当に恐かった…あの時は、子どもだったらから何とも思わなかったけど、見捨てられたような不安があった気がする。(心理士の)“見捨てられ不安”という言葉が耳に入ってきたとき、とてもスッキリした気がした。」
この後、この件から離れて、いろいろな対人関係の話に進みました。
このエナジー調整法を行うと、初回面接のインテークでは聴取できなかったことが、改めて情報として得られることは多くあります。
また、脳波同調としての効果があるため、悶々と直面下をしなくても変化が感じ取れるようです。
リラクゼーションコースの方などは、瞑想代わりに利用する方もいれば、普段社会で多々ご活躍の方など、“じゃ、あとは宜しく”とばかりに、最初から眠りにくる態勢の方もいらっしゃいます。
超心理学における透視とは
透視は、「ネガ」と呼ばれる「イメージ」を見るもので、神がかり的なものの仲介は一切無しに、精神の集中を必要とし、個人ないしは集団のうちにひそむ彼らの過去、現在、未来の諸事実を、一人の人間が時空を越えて感知しうる能力とされます。
ビジョンは透明で、通常の事物に対する視覚をほとんど変えることはなく、そこに現れるイメージは、静的であったり、ダイナミックであったり、ときには断片的にしか記憶にとどめることができないような映画にも似ていて、時には象徴的であるともされています。
また、透視の能力は、各個人に潜在的に備わっているものとされますが、現実には、より能力的に恵まれていたり、遺伝的な面があるとされているようです。
(『透視術』J・デスアール,A・デスアール著、白水社、2003年より)
その透視にプラスして、手を振り、指の反応をみることで、FAP療法の効果がプラスされ、一方的に覗き見る状態だけでなく、互いに通ずる心理的な“共感”も得られ、イメージ療法のような対人的コミュニケーション効果の側面を併せ持つことが窺われます。
利点について
例えば“椅子”という言葉一つを取り上げても、普遍的なイメージの他に、人それぞれに個々のイメージがあり、“椅子”という言葉に対して、姿形からストーリー体験、それに伴う感情まで、それぞれに異なったものがあります。
けれども、言語のみのやりとりによると、どうしてもクライアントのイメージと心理士との間の誤解やイメージの溝が生じたり、物理的な道具が必要となれば、物体そのものによる制限(例えば、クライアントが「表現したい物があるが、ここにはそれが用意されていないので」と、代理を用いざるを得なかったり、表現そのものを控えたりするなど)があります。
FAP療法同様に、心理透視エナジー調整法は、場の設定の必要がなく、また、全てはクライアントから直接伝わる象風景を取り扱うので、やりたくないことを敢えてやらなくてはならない、ということもありません。
言語イメージを、どのように考えて取り扱うか自体も、クライアントと心理士において話し合うことができ、イメージの利用における自由度が高くあります。
特に心的外傷に絡むことは、衝撃が強かった事柄や、思い出したくない出来事など、クライアントの中で直面を避けようとせざるを得なかったり、意識や表面的な記憶から、すっかり消えたようになっていることも往々にあります。
そのような場合でも、この方法は心理士が意図的に導くことをしなくても光景が伝わり、また現実的な場面を露骨に示す表現ではなく、象徴としての単語が並ぶため、クライアントにとってドラマティック過ぎる刺激を避けつつ触れることが可能になるようです。
限界について
FAP療法などは、心的外傷などの治療への即効性や、病理の重いクライアントでも可能とされる心理療法ですが、トラウマリーディング エナジー調整法の限界として考えられることに、様々な言葉が脈絡なしに続いて行くため、精神的な病態が重い(特に自覚の薄い妄想性の病理)場合は避けることが必要の時もあるでしょう。
また、時間的・精神的に、イメージを捉え直すような余裕のない状態のクライアントには、効果は感じ取られにくいかも知れません。
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